●はじめに
 デジタルも面白いけど、暗室の面白さを知らないのは勿体ない。かれこれ銀塩プリントをしなくなって数年。少し情報が古いかもしれませんが、枯れた技術であるため今でも通じるところは多いかと思います。
 ファインプリント、オリジナルプリントというと=高級バライタ紙、アーカイバル処理なわけですが、何しろ高い、面倒くさい。ここでは基本的なプリント方法は省略して、RCプリントを使った「絵」を創る為のちょっとしたテクニックを紹介します。
 プリントは最終的には出来上がった物がすべてですので、この方法にとらわれず、自分の好きなように、やりやすいように工夫しながら実践してみるといいかと思います。
●露光
まずは基本から。相反則不規による感度低下は長時間露光時に影響する事は有名ですが、短時間の場合(フィルムでは1/10000sなど)でも影響します。印画紙はフィルムと違い短時間露光を考えて作られていませんので、長時間でも感度が落ちにくいようにシフトされています。ランプの照度が安定する時間も考えて、1秒以下の短い露光は避けるべきでしょう。
基本として10秒前後で露光出来れば作業もしやすいと思います。しかし後述の焼き込み作業をする場合には、作業をしやすくするため、レンズの絞りを絞り込んで30秒〜1分などの露光も行います。
●基本露光時間の決定
自分はシャドーを基準として露光時間を決定します。
用意する物は小さくてもいいので長方形のテストピースと段階露光する為の厚紙など。
1. 使用するネガの未露光部分(透明の部分)をキャリアーにセットします。
2. テストピースの縦半分を隠し、真っ黒の部分を作る為にたっぷりと露光をかけます。
3. 推定露光時間の前後で段階露光する為、厚紙をずらしていきます。
4. 時間をキッチリ守って現像
5. 一通り終わったら、明室にて2で露光した真っ黒な部分と段階露光の部分の差に注目します。
真っ黒な部分との差が無くなる直前が露光時間です。これによりネガの持つシャドー部分(透明部分)が印画紙の最大濃度を十分に生かす為の露光時間が得られます。
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●コントラストの決定
1. 本番のネガのコマをセットします。
2. 多階調印画紙の場合は号数を変えながら、テストピースに段階露光します。単階調印画紙の場合はいくつかの号数のテストピースでテストします。いずれの場合も少し大きめの方が分かりやすいです。中間調とハイライトが含まれる場所に置きましょう。露光時間は上で出した時間を変えてはいけません。(号数の変化による感度変化は除く)
3. 時間をキッチリ守って現像
4. 一通り終わったら、明室にて2で露光したテストピースをみて、ハイライトがギリギリ飛んでいない号数を判断します。(ネガ上で既に飛んでいる(潰れている)場合は無視)
5. 露光時間を変えず、4で得た号数を参考にして本番焼きをします。
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※ここまで終わってもプリントが濃すぎたり、薄すぎる場合。
フィルムの露光自体がオーバーだったりアンダーだったりします。実は今まで書いた事は理想的な条件で、バッチリと適性露光で撮影出来た場合に限ります。これはこれで、露出の勉強にはいいのですが、実践的ではないですね。
フィルムが適性露出ではない時は、上に書いた基本露光時間の設定の1を実際に使用するコマの一番抜けている部分で行います。
考え方の基本は「黒にしたい場所」で基本露光時間を決定する事です。
そして例外…。
これらはあくまでフィルムの持つ情報を出来るだけ印画紙に収めたい場合です。わざと潰した方がいい場合や、飛ばした方がいい場合もありますので、表現に合わせて調整してください。
●「感」による露光の決定
上で書いていた事と反するようですが、結局はこっちの方が使えたりします。
慣れればだいたいの時間は分かりますが、目安として言葉で表すと下のような感じ。
また印画紙の号数が高くなるにつれ、露光に対しての差はシビアになってきます。
右の写真はPhotoshopによるイメージですので、目安的な物です。
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あと気持ち濃く(薄く)したい
 … 露光時間に1割増やす(減らす)
例えば10秒→9秒、11秒など。
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ちょっと締まりが無い(ちょっと暗っぽい)
 … 露光時間に3割増やす(減らす)
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暗い(明るい)
 … 露光時間に5割増やす(減らす)
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かなり暗すぎる(全然足りない)
 … 露光時間を2〜3倍(1/2〜1/3)
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次…焼き込み・覆い焼き

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