焼き込みと覆い焼き覆い焼きや焼き込みをする時は、レンズの絞りを絞って露光時間を長めにとるとやりやすく、ムラも出来にくい。ただし絞りすぎると光の回折によるボケが発生し始めるので注意。またここで書く事ではないが、引伸しレンズは出来るだけネガの持つ情報を引き出すために、収差の少ない物、抜けの良い物を選ぶといい。絞りは収差を低減させる為に少し絞ってプリント。フィルムの粒子を見ながら、収差の目立たない最大絞りを覚えておくといい。 また、レンズによっては絞り加減でピント位置もズレるので、ピントを合わせる時は、合わせにくくとも開放でなく実絞りで。 |
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●覆い焼き用の小物。 厚紙などに細い針金などを使用して作る。 基本は丸。斜めにする事で楕円にもなる。細かい箇所をやる時に用に、形の違う物をいくつか作っておくといいかと思う。色は黒で、黒紙でなければマジックなどで塗っておく。 複雑な箇所をやる時は、少し小さめにプリントした物を切り抜いて作る時もある。 |
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●焼き込みようの台紙。 表を白、裏を黒くしておくと、焼き込む個所が分かりやすい。 穴は支柱にぶつからないように、中心から少しズレた場所に開けた方がいい。また、自分のやり方では印画紙に近い個所で動かす時も多いので、印画紙以上の大きさが必要になる。穴の大きさは自分の場合1cm弱くらい。 |
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印画紙に近い場合には境目が出やすいので、小刻みに動かす。 | |
レンズに近いと境目のボケが大きくなり、面積も大きくなる。 水平方向だけではなく、上下に動かしたりもする。 |
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焼き込み。 自分の場合、まず大きな面積をレンズに近い位置で焼き込み、その後ピンスポット的に各箇所(3〜10箇所くらい)をじっくりと焼き込む。自分のやり方はデータなんか取らないので、毎回仕上がりは違う。 |
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●作例 Photoshopによるイメージです。 まずは前ページで出した基本露光値の3割〜5割減くらいで全体を焼く。 |
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結構自分の好きな手法だが、広角の時は周辺を焼き込む事が多い。 これによって被写体が浮き立ち、遠近感が出る。 丸く切った覆い焼きパーツをレンズのそばで大ざっぱに上下に動かす。 好みにもよるが、基本露光値の2倍くらいの事が多い。 必要とあらば多階調印画紙でコントラストを上げて焼き込めば、雲だけは白いまま残す事も出来る。 |
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空のディティールを出す為、水平線あたりから上を焼き込み。 水平線付近に向けて、だんだんと明るくしていった方が空気感が出る。 地面も同様に水平線に向けて、明るくしていった方がいい。 |
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ボディの部分を焼き込み。 金属質を出す為、多階調印画紙ならばコントラストを上げての焼き込み。 通常の印画紙ならばメインの被写体となるボディの質感に合わせて号数を選択すべきだろうか。勿論その時はこの工程(ボディにのみ焼き込み)はトーンが出てさえいれば端折られる。 |
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部分部分の飛び気味で浮いている箇所をピンスポットに焼き込み。 | |
最後に多階調印画紙ならば、黒を締める為にコントラストを上げて全体を少しだけ焼く。 これPhotoshopなので、実際にはもう少しボディの白が沈むはず。二つ上のボディへの焼き込みでコントラストが足りなかった、もしくは焼き込みすぎが原因。 ちょっと空が不自然だ。又は減光の形が濃すぎる事がいけないのかもしれない…ちなみに空を落として、重くしていくと、おどろおどろしい雰囲気になる。Photoshopだとこの段階からやり直しが効くが、銀塩では最初からやり直し。結局気に入るまで何枚も焼いて、完成形に近づけていく。しかし、その時いいと思っていても、後から見たら他のプリントの方がいいと思う時もよくあるので、その後の水洗、乾燥はしっかりやっておいた方がいい。 |
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コツというか概念としては 1.全体のイメージを大切に 2.見せたい物に自然と目が向くように 3.いらないところを消す(2.に通じるところ有り) こんな感じです。風景や人物など階調の豊かさも大事なプリントでは、潰しすぎないよう、飛ばしすぎないように注意してください。そして被写体の持つ質感を大事にしてください。中間調は自然に。黒の中の黒、白の中の白…ねばりを大切に。 自分の考えではプリントという作業はネガに写った「情報」を「表現」する為の手段です。赤い服が赤っぽく見えなくとも、木の緑が新緑のようになろうとも、それが表現する為に必要ならば変えてしまうのも有りだと思っています。…記録写真は別ね。 最後に…結局はネガの出来でほとんど決まってます。ネガはフィルムの選択や現像で、そしてなにより撮影で決まります。ネガだからと油断するときれいなプリントは出来ません。 |
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最終的に決定したのはこんな感じ。 (ちょっとモニターの調子が悪いのでちゃんと再現出来てるか心配。)元がネガからのスキャナー取り込みなので、どうしてもハイライトが弱い。無理な焼き込みをしても、トーンが出ない上、粒子も目立つようになる。 |